第18章 Trick or treat!
「…それ以上つまんねー事言ったら、女だからって容赦しねぇから」
「っ…」
「…さっさと失せろ」
「な、何よっ…」
聞いた事もないような怖い声で女の子にそう告げるリアンくん。
彼女たち2人は逃げるようにバタバタと走り去っていったようだった。
(リアンくん…)
それから少し経って私はようやくトイレを出た。
すぐそこに立っていたリアンくんは、「遅ぇよ」と言ってこちらへやって来る。
「ご、ごめん…メイク直してたから…」
「………」
「…リアンくん?」
「ちょっとこっち来て」
「きゃっ…」
強引に腕を引かれ、人気の無い通路の突き当たりまで連れて行かれる。
ようやく立ち止まった彼はこちらを振り返って溜め息をついた。
「さっきの…聞いてたんだろ」
「……、別に私…気にしてないから…」
「じゃあなんでそんな泣きそうな顔してる訳?」
「っ…」
自分がどんな顔をしているかなんて分からなかったが、少なくとも彼にはそう見えたらしい。
ポーカーフェイスの出来ない自分を恨む。
「あんな女が言った事、いちいち気にすんな」
「………」
でも彼女が言った事は本当だ……私は最低な事をしている。
いつまでもリアンくんと皐月くんの間をフラフラして…
「…それ以上くだらねぇ事考えたら、今この場で犯すけどいい?」
「っ…」
気付けばすぐ目の前にリアンくんの顔があった。
私の心の中を見透かすようにそんな事を言ってくる。
「他人にどう言われようと…これは俺たち3人で決めた事だろ?俺もアイツも承知でアンタと付き合ってんだ」
「…リアンくん……」
「それとも…アンタはもうこんな関係止めたくなった?俺らに愛想尽かした?」
「そ、そんな訳ないっ…」
愛想を尽かされるとしたら私の方だ。
2人の事を嫌いになるなんて絶対に有り得ない…
「…だったら大人しく俺らに愛されてればいい」
「んっ…」
強引に奪われた唇。
けれどすぐに顔を離した彼は、私のグロスで光る自身の唇を厭らしく舐めた。
「…そーいやまだ言ってなかったよな」
「…え…?」
そう呟いて今度は私の耳元に唇を寄せてくる。
「Trick or treat?」
「っ…」
そのネイティブな発音と、囁くような声に思わずドキリと心臓が跳ねた。
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