第18章 Trick or treat!
「私、ちょっとお手洗いに行ってくるね」
イベントも中盤に差し掛かった頃…
私はメイク直しも兼ね、リアンくんと皐月くんにそう断って会場を出ようとした。
すると…
「だったら俺も行く。アンタを1人にする訳にはいかねーから」
そう申し出てきたのはリアンくん。
「大丈夫だよ、トイレすぐそこだし」
「アンタの言う"大丈夫"はいつも大丈夫じゃねーだろ」
「……、」
私ってどれだけ信用されてないんだろう…
結局、「お前はここで留守番な」と皐月くんに声を掛けたリアンくんは私と共に会場を出た。
(やっぱり人混みって苦手かも…)
こういうイベントにもクラブという場所に来たのも初めてだから、余計にそう思うのかもしれないが…
そんな事を考えながら、簡単にメイク直しをしてトイレを出ようとすると…
「ねぇねぇ、この後私たちとどっか行かない?」
「お姉さんたちが楽しい場所に連れてってあげる」
「…は?行かねーし」
「……、」
通路の方から、女の子2人の声とリアンくんの声が聞こえてきた。
もしかしなくても、彼は逆ナンされているようだ。
「え~、いいじゃーん。私たちずーっとあなたの事カッコイイなぁって見てたんだよー?」
「じゃあ知ってんだろ…俺、連れいるから」
「連れって、あの黒猫の女の子と狼の男の子?」
「…ああ」
「だったらあっちはあっちで楽しんでもらって、あなたは私たちと遊べばいいじゃない?」
「しつけーな、遊ばねーって……つかあの人、俺の彼女だから」
躊躇いもなくそう告げたリアンくん。
女の子たちは驚いたのか、「えー!」と嘆いている。
(で、出るに出られない…)
「彼氏と来てるのに、他の男にも色目使ってるとかサイテーじゃない?あんな露出度の高い服着てさ…あの子絶対狼の子にも気があるって感じー」
「っ…」
相手が見知らぬ子とはいえ、彼女の放った言葉が深く胸に突き刺さった。
端から見ればやはり、私はそういう目で見られているのだ…
ドアの把手を持つ手に力が入る。
イベント中…ホントはリアンくんもそう思ってたのかな…?
「だからさー、あんな浮気な彼女はやめて私たちと…」
彼女がそう言った瞬間、バンッ!と壁を叩くような激しい音が聞こえた。
それと同時に小さく響いた女の子の悲鳴。
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