第18章 Trick or treat!
「リ…リアンくん!」
お店の中へ入ってきたのはリアンくんだった。
彼がここへ来るのはずいぶん久しぶりだ。
それこそ私たちが今のような関係になってから、彼と皐月くん、そして私の3人が同時に顔を合わせる事はなかった。
「い、いらっしゃい…いつものでいい?」
「ああ…。アンタもうすぐ上がりだろ?それまでここで待たせてもらう」
「……、」
そう言ってリアンくんはいつもの定位置に着く。
私1人で気まずい思いをしていると…そんな事情など知らない可南子ちゃんが、今度はリアンくんに駆け寄り声を掛けた。
「金髪美少年、超久しぶり!」
「…ハァ……その呼び方止めてくんない?」
「あははっ、別にいいじゃん。ねねっ、今度の日曜あなたもハロウィーンパーティに来ない?」
「…は?」
「ちょ、ちょっと可南子ちゃん!?」
(いきなり何を言い出すの!?)
当然リアンくんは訝しげな顔をしていて。
「今ちょうどその話をしてたんだけどぉ…桜子さんも皐月くんも来るし、あなたもどうかなーって」
「………」
いや、私まだ行くとは…
そもそもリアンくんがそんなとこ行く訳な…
「…行く」
「………え?」
「この人が行くなら俺も行く」
そう言って彼は私を指差した。
「やったぁ、これで新規3人ゲットー!ご褒美に、彼氏に新しいバッグ買ってもらおーっと」
「………」
そんなゲンキンな事を言っている可南子ちゃん。
どうやら私たちはすっかり彼女のペースに呑まれてしまったようだ。
「…リアンくん、本気?」
小声で彼にそう尋ねる。
「ハロウィーンて事は…アンタも仮装するんだろ?」
「……、可南子ちゃんはそう言ってたけど……」
「それを見てみたいっつーのもあるし……それに」
「…?」
「アイツも行くなら」
「……、」
アイツとは勿論皐月くんの事だろう。
「アイツだけにイイ思いさせんの癪だしな」
「リアンくん…」
そして閉店後…
「…つか、お前空気読んで先に帰れよ」
「桜子さんを家まで送るのは俺の役目ですから」
「……、」
私の左隣にはリアンくん…
右隣には自転車を押しながら歩く皐月くんがいた。
そんな2人の間に挟まれている私…
(…なんでこうなったんだっけ……?)
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