第18章 Trick or treat!
「…ハロウィーンパーティ?」
「はい!」
閉店1時間前…
ラストオーダーの時間まではまだ30分程あったが、ちょうどお客さんが途切れ店内には私たちスタッフだけになった。
そんな中、暇を持て余したらしい可南子ちゃんが私に声を掛けてくる。
「彼氏の先輩がクラブでDJやってるんですけどぉ、今度その先輩がハロウィーンイベントを開くらしいんですよぉ。まだ参加者が足りないからって、知り合いに声掛けるよう彼氏に頼まれてて…。お店も定休日だし、桜子さんも行きましょうよぉ」
「クラブかぁ…。私そういう所に行った事ないからなぁ」
正直人混みは苦手だ。
周りに知り合いがいないとなればそれは尚更で…
「大丈夫ですって、私もいますし!それに桜子さんの参加費用は彼氏に払わせますからぁ」
「そ、それは悪いよ…」
何とか上手い理由をつけて断れないだろうか…
(でもせっかく可南子ちゃんが誘ってくれたのに、断るのも悪いかな…)
そんな事を考えていると、彼女は店の奥でモップ掛けをしている皐月くんに声を掛けた。
「ねねっ、皐月くんも行こうよぉ!」
「え……俺ですか…?」
「そうそう!桜子さんも皐月くんが一緒なら心細くないんじゃないですかぁ?」
「……、それはそうだけど…」
「それに皐月くん!桜子さんのコスプレ姿見たくなーい?」
「………」
可南子ちゃんの言葉に目を丸くさせている皐月くん。
というか…
「ちょ、ちょっと待って…コスプレって?」
「なーに言ってるんですかぁ。ハロウィーンパーティなんですから仮装するのは大前提ですよぉ?」
「……、私そういうのはちょっと…。それに衣装とか持ってないし…」
「それなら大丈夫です、衣装なら会場にいっぱい用意されてるみたいですから!勿論桜子さんの衣装は私が選んであげちゃいます!」
「いや、あの…」
どうしよう…どんどん話が膨らんできちゃってる……
助けを求めるように皐月くんへ目を向ければ、彼はにこりと笑ってこう言った。
「俺…桜子さんの仮装姿見てみたいです」
「…え……」
「よーし、じゃあ決まり!」
パンッと嬉しそうに両手を合わせる可南子ちゃん。
その時…
「あっ、いらっしゃいませ」
来客を知らせるドアのベルが鳴った。
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