第3章 恋は盲目、ストーカーは犯罪
私から封筒を奪ったリアンくんは、すぐにその封を切った。
「つっ…」
「…!」
その瞬間表情を歪めた彼。
彼の手元に視線を落とせば、その人差し指から真っ赤な血が流れている。
封筒の切り口には、カッターの刃のような物が取り付けられていたのだ。
「チッ……こんな古典的な手に引っ掛かるなんてな…」
「リアンくん、血が…!」
「…大した事ない」
「何言ってるの!早く手当てしなきゃ…!」
私は夢中で彼の手を掴むと、2階にある自分の部屋へ駆け込んだ。
「痛いと思うけど、ちょっと我慢して?」
彼を部屋に通し、痛々しいその傷口に消毒液を塗る。
幸い傷はそこまで深くないようで、素人の私にも応急処置が出来る程度だった。
「……ごめんなさい」
彼の指に包帯を巻きながらそう謝る。
彼が怪我をしてしまったのは私のせいだ…
「…なんでアンタが謝んの?」
「だって…」
「悪いのは悪質なストーカー野郎で、アンタじゃないだろ?」
「……、」
「それにこれは多分、最初から俺を狙ったものだ」
「え…?」
「ストーカー野郎にとって俺の存在は邪魔で仕方がない。アンタの代わりに俺がその封筒を開けるのも予測してたんだろう」
「そんな…」
「ご丁寧に封筒のどちらから開けても、俺が指を切るようにカッターの刃が仕掛けられてる」
そう言って彼はその部分を私に見せてきた。
「ねぇ…やっぱりもうボディーガードなんて辞めて?これ以上リアンくんを巻き込む訳にはいかない。私…叔父さんに相談してみるから…」
本当は最初からそうすべきだった。
まさか犯人がここまで悪質な事をしてくるなんて……私は甘かったのだ。
「俺…犯人を捕まえるまでやめねーって言ったはずだけど」
「何言ってるの!次はもっと危ない目に遭うかもしれないんだよ?」
「それでもいい……アンタを守れんなら」
「っ…」
膝の上で握っていた手を彼に取られる。
そして初めて会った時のように、指先に触れるだけのキスをされた。
「…アンタが怪我しなくて良かった」
「リアンくん…」
綺麗なブルーの瞳が私を捕らえる。
そのまま彼の顔が近づいてきたので、私は反射的にやんわりその胸を押し返したが、それも空しく唇を奪われてしまった。
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