第3章 恋は盲目、ストーカーは犯罪
「…お疲れ」
「………」
一日の仕事を無事に終え店を出ると、今朝言っていた通りリアンくんが待っていた。
ここまでしてもらうのは、やはり何だか悪いような気がする。
「今日は一日どうだった?変なヤツいなかった?」
「うん…特には」
「…なら良かった」
そう言って安堵の息を漏らす彼。
「ねぇ…やっぱり送り迎えはいいよ。リアンくんだって大学とかあるんだし、忙しいでしょ?」
「それは気にするなって言ったじゃん。つかさ…」
一旦言葉を切った彼は、隣を歩く私の手を握ってきた。
その冷たさに驚き思わず肩を竦める。
この季節、夜はまだ肌寒い。
彼は一体どれ程の時間外にいたのか…
「アンタの為に時間が使えんなら嬉しいし」
「っ…」
…この子はどうしてそういう事をサラッと言えるのだろう。
やはり西洋人の血が混ざっているからだろうか。
握られた手を振り払う事が出来ず、私たちはそのまま手を繋いで歩いた。
「明日からはお店の中で待ってて」
「え?」
「…手、冷た過ぎ」
「じゃあアンタがあっためてよ」
そう笑って彼はより一層強く手を握ってくる。
こんなやり取り、端から見ればまるで恋人同士のようだ。
それから特に何事もなく1週間が過ぎた。
2通目の封筒が届いてからは何も来ていない。
やはりあれはただのイタズラだったのだろうか?
「ねぇリアンくん。あれから何の音沙汰も無いし、もうボディーガードしてもらわなくても大丈夫だと思うんだけど…」
いつものように彼に送ってもらっている途中、私は彼にそう言った。
けれど彼は首を横に振る。
「…アンタって意外と危機感無いのな」
「え…?」
「なんで大丈夫だって言い切れる訳?ストーカーを捕まえるまでは安心なんて出来ないだろ?」
「…それはそうだけど……」
「アンタが何と言おうと、俺はストーカーを捕まえるまでやめねーから」
「………」
確かに彼の言う事は正しい。
結局私は異議を唱えられず、無事家まで送り届けてもらった。
そして今日も何事もなく1日が終わる……そう思っていたのに。
「…!」
ポストを開けた瞬間、金縛りに遭ったかのように体が動かなくなった。
そこに見覚えのある封筒が入っていたからだ。
「…リアンくん……これ…」
「……貸して。俺が開ける」
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