第16章 ゲームとお仕置き
ハッキリそう告げると、ジョエルさんは少し驚いたような顔をした。
「…それが貴女の答えですか?」
「はい…。もしそれで私とリアンくんの仲が引き裂かれる事になるなら、それは仕方のない事だと思います…。それでも私は、あなたのオモチャにも言いなりにもなりません」
「……、」
私の言葉に目を丸くさせる彼。
余程意外だったのか言葉を詰まらせているようだ。
「…そもそも私とリアンくんが別れる事になっても、あなたには何のメリットも無いはずです」
「………」
「それに…私はあなたがそんな卑怯な事をする人だとは思えません…」
こんな目に遭っているのに馬鹿な事を言っているのは重々承知だが、私はまだ心の中でジョエルさんの事を信じている。
レストランで家族の事やリアンくんの事を話していた時に見せた淋しそうな表情…
あれが彼の本当の姿なのではないだろうか?
彼とちゃんと話したのは今日が初めてだったが、何となくそんな気がした。
「…参りましたね」
ようやく口を開いた彼は、溜め息混じりにそう呟いて体を起こす。
私も起き上がり再びシーツを手繰り寄せた。
「…ゲームは私の負けです」
「……、ゲーム…?」
「実は貴女が眠っている間、貴女宛てに弟から電話があったんです」
「えっ…!」
「そこで賭けをしたんですよ。貴女が私の言う事を聞くかどうか…ね」
「なっ…」
という事は、今日私がジョエルさんに会ってるってリアンくんにバレたって事…?
(ど、どうしよう…)
もうゲームの事なんてどうでもいい。
リアンくんに何て言い訳すれば…
「桜子さん、顔色が悪いようですが大丈夫ですか?」
「あ、あなたのせいです!」
「ははっ、すみません」
そう笑うジョエルさんは楽しそうで全く反省していないようだ。
「安心して下さい。弟にはちゃんと理由を話しておきましたから」
「……、」
「まぁ少し…いや、かなり怒っていましたけど」
「全然安心出来ないじゃないですか!」
「ふふ…どうせ怒られるなら、一度私に抱かれてみませんか?」
「…からかわないで下さい」
「手厳しいですね…私は本気なのですが」
そう言って私の髪の毛を手に取るジョエルさん。
そしてその毛先に軽くキスをしてくる。
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