第16章 ゲームとお仕置き
「…ゲーム?」
兄貴の口から出た言葉に思わず顔を顰める。
一体何をしようと言うのだ。
『じきに彼女も目を覚ます。女性を無理矢理どうこうする趣味は無いが…もし彼女から了承を得たら、抱いてもいいだろ?』
「…は?彼女がそんな事了承する訳…」
『勿論そうだろう。でも健気な彼女の事だ…もし私の言う事を聞かなければ、父にお前たちの関係を話すと言ったら彼女はどうすると思う?』
「っ…」
『安心しろ。例え彼女が私を拒んだとしても父に告げ口するつもりはない…これはただのゲームだからな』
「ざけんな!何がゲームだ、そんな事俺が許さない!」
『別に私はお前に許しを乞おうなんて思っていない。精々彼女が馬鹿な選択をしないようそこで祈っているんだな』
「おい…!」
そこで通話は切れた。
すぐに掛け直してみたが、向こうの電話はすでに電源が切られていて…
「クソッ…!」
どうしてこんな事に…
兄貴の目的は一体何だ…?
俺の事なんか今までずっと無関心だったくせに…
彼の口振りからして、親父に何かけしかけられた訳ではなさそうだ。
それなら尚更その意図が解らない。
(せめて2人の居場所が判れば…)
*side 桜子*
「ん…」
「…目が覚めましたか?」
「……、」
霧がかかったようにぼんやりする頭と視界。
そんな私を見下ろしていたのは、すぐ傍に腰掛けていたジョエルさんで…
(…って……あれ?)
「ふふ…まだお酒が抜けていないようですね」
そう言いながらそっと私の頬を撫でてくる彼。
その彼は何故かバスローブを羽織っている。
「…!」
私はそこでようやく意識を失くす前の事を思い出した。
ガバッと体を起こし、ベッドの隅に移動する。
(そうだ、私…)
ジョエルさんにお酒を飲まされて、眠くなってそのまま…
ここは恐らく彼が取っていたというホテルの一室だろう。
しかも所謂スイートルームと呼ばれる超高級な部屋…
(…というか)
「…!?」
妙に肌寒いと思っていたら、私は下着上下しか身に着けていなかった。
慌てて手元にあったシーツを手繰り寄せる。
「すみません…ワンピースが皺になってはいけないと思い、脱がさせてもらいました」
「っ…」
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