第15章 金髪イケメンの正体
(うわぁ…)
そのレストランはホテルの30階にあった。
とても綺麗な夜景に思わず目を奪われてしまう。
(…って感動してる場合じゃない!)
「どうぞ、こちらにお掛けになって下さい」
「あ、ありがとうございます」
ボーイさんに椅子を引かれお礼を言って腰掛ける。
予約されていた席は窓側の特等席だった。
「桜子さんは何を飲まれますか?」
「えーっと…」
メニュー表を見ても正直何が何だか解らない。
こういう場では食前酒を注文するのが正解なのだろうか?
けれど以前お酒で苦い失敗をした経験がある私は、ジョエルさんにお酒が苦手である事をそれとなく話してみた。
「そうですか…では私に任せて頂いても宜しいですか?」
「はい…お願いします」
私の言葉を聞いた彼はボーイさんを呼び、メニュー表を指差してそれぞれの飲み物を注文してくれた。
こういう場に今まで縁の無かった私にとっては、彼の些細な所作にも軽く感動を覚えてしまうくらいだ。
(何を話せばいいんだろう…)
ボーイさんが去って行き、当然私の目の前にはジョエルさんだけ。
彼は口元に柔らかい笑みを浮かべたままこちらを見つめている。
(いっその事…思いきって聞いてみようかな)
ジョエルさんが私に近付いてきた理由…
「あの…ジョエルさん」
「はい」
「単刀直入に伺いますが……どういうつもりなんですか?」
「どういうつもり…とは?」
「今日…私を誘った理由です」
ハッキリそう告げると、彼はひどく驚いたような顔をしていた。
余程私の質問が意外だったのだろう。
「理由…ですか。素敵な女性をデートに誘うのに理由など必要ないと思いますが」
「ご、誤魔化さない下さい。あなたは私がリアンくんの知り合いだから声を掛けてきたんですよね?私はその理由が知りたいんです」
「………」
今度は少し語調を強めて言えば、彼はまた穏やかな笑みを浮かべる。
「それは少し違いますね。興味を持った女性が偶々弟の恋人だっただけです」
「わ、私とリアンくんは別に…」
「隠さなくてもいいですよ。前にも言った通り、私は別に貴女と弟の事を父に告げ口するつもりはありませんから」
「でも…今日この誘いを断ったら、私とリアンくんの事をお父様にお話しするつもりだったんでしょう…?」
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