第15章 金髪イケメンの正体
「こ、困ります…!私、そんなお金っ…」
「ああ…費用の事なら気になさらないで下さい。それと…そのワンピースに合うバッグと靴も必要ですね」
「え…」
戸惑う私を気にする様子も無く、今度は店員さんにバッグと靴を見繕わせるジョエルさん。
結局私は逆らう事も出来ず、次々と試着させられ彼らの着せ替え人形になるのだった…
「さて…そろそろレストランへ向かいましょうか」
「………」
お店を出て再び車へ乗り込む。
たった数十分の間に、私はずいぶん窶れた気がした。
(ジョエルさん…一体いくら遣ったんだろ…)
きっと見た事もない色のクレジットカードを使うのだろうと思ったが、彼はお会計をしなかった…所謂"顔パス"というやつだ。
「どうかしましたか?」
「…え…?」
「浮かないお顔をされているようですから」
ハンドルを握りながら、ちらりとこちらへ視線を向ける彼。
浮かない顔をしているのはあなたのせいなのですが…と喉元まで出そうになる。
「せっかく買って頂いたのに申し訳ないのですが…この服、私には分不相応な気がして……」
「そんな事はありません。とてもよくお似合いですよ」
「……、」
その言葉が例えお世辞だったとしても、ついつい顔を赤くしてしまう。
…この人は女性の扱いに慣れているのだ。
顔は少しリアンくんに似ているが、中身はまるで違う。
いや…ひょっとしたらリアンくんも私以外の女性には紳士なのかもしれないけれど…
そんな事を考えているうちに目的のレストランへ着いたのか、車は建物の駐車場へ入っていった。
どうやらここは高級ホテルのようで、レストランはこの建物のどこかにあるらしい。
「今日はこのホテルに部屋も取ってあるんです。桜子さんが酔って帰れなくなってもいいように…ね」
「っ…」
「ふふ…冗談です。そんなに警戒しないで下さい」
耳元でそう囁いた後、彼は先に車を降り私をエスコートしてくれた。
(私、絶対からかわれてるよ…)
彼は本当にどういうつもりなのだろう…?
一瞬忘れかけていたが…今日ジョエルさんに会った目的は、彼が何故私に近付いてきたのかを探る為でもある。
彼の言動に振り回されている場合ではない。
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