第15章 金髪イケメンの正体
「あの…今日はどこへ…?」
車を運転するジョエルさんの隣でその横顔を窺う。
彼は前方に視線を向けたまま、その口元だけを動かした。
「それは着いてからのお楽しみです」
「……、」
「レストランの予約は18時にしてあるのですが、その前に寄りたい所があるんですよ」
「は、はぁ…」
予約の時間まではあと1時間弱…一体どこへ連れて行かれるのだろう。
そう思っていたが、彼は車を10分程走らせたところですぐにとある店の駐車場へ入っていった。
…外観からして明らかに高級なブランドショップ。
洋服をメインに扱っているようだけれど…
「あ、あの…ここは……」
「はい。予約しているレストランは正装でなくては入店出来ませんので、申し訳ないのですが桜子さんにはここで着替えて頂きます」
「え…」
自分としてはこれでもちゃんとした格好をしたつもりだったが、どうやら駄目だったらしい。
…正直少し馬鹿にされたような気もした。
そんな私の気持ちを汲み取ったのか、彼がすぐにフォローするように声を掛けてくる。
「すみません…その格好もとても愛らしくて素敵なのですが…。男には綺麗な女性を自分好みに変身させたいという勝手な願望があるんですよ。どうか許して頂けませんか?」
「……、」
次から次へと歯の浮くような台詞を言ってくる彼。
私はムッとしていた事も忘れ、渋々彼の言う通りに従う事にした。
(に、20万…!?)
店員さんに勧められたワンピースを持って試着室に入った私。
何気なくその値段を見て目を疑う。
高い物だと思ってはいたが、まさかそんなにする物だなんて…
(下手したら、普段着てる服と2ケタ違うよ…)
そう思いつつもそのワンピースに袖を通してみる。
高いだけあって肌触りの良い素材…
着るだけならタダだし…と思いながら、私はそれに着替え試着室を出た。
「…素晴らしい」
「……、」
着替えた私を見てそう呟くジョエルさん。
その視線に耐えられず思わず俯いてしまう。
「これ…このまま着て行くから、値札切ってもらえる?」
「畏まりました」
店員さんにそう告げる彼に慌てた。
このままって…こんな高い服買えないんですけど!
「ちょ、ちょっとジョエルさんっ…」
「はい?」
いや、はいじゃなくて…!
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