第3章 恋は盲目、ストーカーは犯罪
(どうして彼がここに……)
私の心の声が聞こえたのか、彼は悪怯れもなく言った。
「今日店行ったんだけど、もう終わってて…。ちょうどアンタが帰るとこだったから後つけてきた」
「っ…」
その言葉を聞いて、恐怖よりも怒りが込み上げてくる。
ここがアパートの入り口だという事も忘れ、私は彼を怒鳴りつけていた。
「やっぱりあなただったの!?こんな写真送りつけてくるなんてどういうつもり!?」
「………」
私の剣幕に驚いたのか、彼は一瞬言葉を失っていたがその眉間にうっすら皺を寄せる。
「…つか、何の事?」
「とぼけないでよ!これをポストに入れたのあなたでしょ!?」
そう言って写真とメモを彼の顔の前に突き出した。
それを手に取った彼は「俺じゃねーし」と言い返してくる。
「だ、だってこんな事するのあなたしか…」
「…証拠でもあんの?」
「え……そ、それは…」
「俺はこんな陰湿な事しねーよ」
「……、」
「それとも……このメモの筆跡鑑定でもしてみる?」
「ぅ…」
そこまで自信たっぷりに言われては何も言い返せない。
彼がやったという証拠はどこにも無いのだ。
「なぁ…何があったのか詳しく聞かせろよ」
「…え……?」
「俺は犯人だって疑われたんだぜ?聞く権利くらいあるだろ」
「……、」
確かに私は、証拠も無しに彼を疑ってしまった。
話す義務はあるだろう。
「まっ、ここじゃ何だしアンタの部屋でゆっくり…」
「近くに公園があるからそこで話すわ」
「チッ…」
どさくさに紛れてとんでもない事を言ってくる彼の言葉を聞き流し、公園へと歩き出す。
5分程歩いた所にその公園はあった。
ベンチに腰を下ろし、あまり気は進まなかったが、昨日と今日盗撮写真がポストに入っていた事を彼に話した。
「…で?なんで犯人が俺な訳?」
「だ、だって……しつこくデートに誘ってくるし…家までつけてきたとかストーカーみたいな事言うし…」
あのタイミングで現れたのだから、疑われても仕方がないだろう。
「さっきも言ったけど、俺じゃねーから」
「……証拠は?」
「俺だったらそんなまどろっこしい事しねーよ」
「………」
「そんなもん送る前に、誘拐でも拉致でもする」
「なっ…」
お巡りさん、ここに犯罪者予備軍がいます!
.