第14章 疑惑と嫉妬
「桜子さん…もしかしてご飯まだですか?」
「う、うん…あまり食欲が無くて…」
「……、俺のせい…ですよね?」
「っ…、ちが……」
いや、確かに皐月くんの事でモヤモヤしていたからではあるが…
結局その後、彼は私の為に消化の良いものを作ってくれ、私はそれを全て平らげた。
「それじゃ俺…そろそろ帰りますね」
食事を終えて他愛ない話をした後、そう言って皐月くんが立ち上がる。
私としては、もう少し彼と一緒にいたかったのだけれど…
(皐月くんだって明日の朝早いだろうし…やっぱり迷惑だよね…)
そう思いながら、玄関へ向かう彼の後を追う。
「皐月くん…来てくれてありがとう」
「いえ…今日はゆっくり休んで下さいね」
「あ、あの…」
「…はい?」
つい勢いで彼の服の裾を掴んでしまった。
私は一体何を言おうとしているのだろう…
「え…えっと…、」
「…桜子さん?」
「っ…、ごめん、何でもない…」
顔を覗き込んでくる彼の視線に耐えられず俯く。
(やっぱり言えない…もう少し一緒にいてほしいなんて…)
けれど掴んでいた彼の服を放すと、反対にその手を取られてしまった。
「桜子さん…俺に何か言いたい事があるんでしょう?」
「……、」
「聞かせて下さい…桜子さんの口から」
優しい瞳に見つめられる。
今だけは…甘えてもいいのかな…?
私はこくりと息を呑み、彼の瞳を見つめ返した。
「もう少しだけ…皐月くんと一緒にいたい…」
「………」
一瞬驚いたような顔を見せた彼だが、すぐに優しく微笑み私を抱き締めてくれる。
「…桜子さん、可愛過ぎ」
「……、」
「本当は俺もまだ一緒にいたいって思ってたけど…桜子さん体調悪いかなって心配で…」
「…平、気」
「…でも……俺、我慢出来ないかもしれませんよ…?」
「っ…」
その甘い囁きに私は小さく頷いた…
「今日は…私がシてもいい…?」
「…え…?」
ベッドの上でキスを交わした後…ちらりと皐月くんを見上げその様子を窺う。
さっき彼から『紫さん』という女性の話を聞いた時…正直少しだけ嫉妬している自分がいた。
もう過去の事だとは解っていたが、それでも彼と関係を持っていたという彼女に…
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