第14章 疑惑と嫉妬
(なんかホントに熱が出てきたかも…)
家に帰ると気が抜けたのか、本当に体調が悪くなってきた。
昨日から何も口にしていなかったが、相変わらず食欲は無くて。
私は部屋着に着替え、水分補給だけしてベッドに潜り込んだ。
今は何も考えたくない…
――ピンポーン…
「ん…」
それからしばらく眠ってしまっていた私だったが、ふと聞こえてきたインターフォンの音で目が覚めた。
窓の外はもうすっかり暗い。
(誰だろ…)
しっかり眠ったお陰で頭はスッキリしていたものの、空腹のせいで足元が少しふらつく。
私は玄関まで行き、ドアスコープを覗き込んだ。
「…!」
ドアの向こうにいたのは皐月くんで…思わず後退りしてしまう。
(どうして皐月くんが…)
「桜子さん…そこにいますよね?」
「っ…」
「メールしたんですけど返事が無かったので…もしかしたら倒れてるんじゃないかと思って、心配になって来ました」
「……、」
…どうやら彼は私が寝ている間に連絡をくれたらしい。
それに気付いていれば、「大丈夫」だと返信するだけで彼に会わずに済んだのに…
そんなマイナスな事を考えてしまう。
「それに俺…桜子さんに話したい事があって…」
「………」
「昨日桜子さんの様子がおかしかったの…俺のせいですよね?」
「……、」
「…可南子さんから全部聞きました」
「…!」
彼の言葉を聞いて頭が真っ白になった。
私と可南子ちゃんのやり取りを知った上で話があるという事は、"例の事"しかない。
…正直聞くのが怖い。
最悪別れ話かもしれないし…
でも…今日この場を逃れても、いつかはちゃんと話さなきゃいけない…
私は意を決して目の前のドアを開けた。
「桜子さん…良かった」
体調を心配してくれていたのか、私の姿を見るなりそっと抱き締めてくる皐月くん。
その温かさに自然と涙が込み上げてくる。
数時間前まで、こんな関係もう終わらせた方がいいんじゃないかと思っていたのに、いざ彼を目の前にするとその気持ちは揺らいでしまって…
(やっぱり別れたくない…)
「…お願い皐月くん……、私の事…嫌いにならないで…っ…」
「っ…、桜子さん…?」
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