第14章 疑惑と嫉妬
「ハァ…」
荷物を放り、ベッドにダイブする。
想像以上にショックだった。
あの皐月くんが他の女の人とホテルに行ったなんて…
(やっぱり…こんな関係嫌になっちゃったのかな……)
当然と言えば当然だ。
今まで私のワガママに付き合ってくれただけでも有り難いと思わなければいけない。
皐月くんはその女の人に対して本気なのだろうか?
それともただの浮気…?
もし…万が一浮気だったとしても、私に彼を責める資格は無い。
(皐月くんもリアンくんも…本当はいつもこんな気持ちなのかな…)
好きな人が自分の知らないところで、自分以外の人と一緒にいる…
それがこんなにも辛い事だとは思わなかった。
やっぱりこんな関係やめるべきなのかもしれない…
その夜私は夕食も摂らず、涙を零しながら眠れぬ夜を過ごした…
(もう朝…?)
カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。
寝不足と空腹のせいで体は怠く、頭も痛い。
私は気怠い体に鞭を打ち、ベッドから出て仕事へ行く準備を始めた…
「桜子さん、顔が土気色ですよぉ!」
「………」
出勤早々可南子ちゃんにそう突っ込まれる。
私はそんなにひどい顔色をしているのだろうか…
「昨日も体調悪そうでしたし、今日は休んだ方がいいんじゃないですかぁ?」
「ううん…平気」
こんな私情で仕事を休む訳にはいかない。
けれど私が答えるよりも早く、「マスターに伝えてきますね!」と言って可南子ちゃんは走って行ってしまった。
「あ、ちょっと…」
ホントに大丈夫なんだけどな…
正直働いていた方が余計な事考えなくて済むし…
「ハァ…」
今日も皐月くんと顔を合わせるのかと思うと気が重い。
きっと彼は昨日の私の態度を不審に思ったはずだ。
もしその事を問われたら…
『皐月くん…浮気してるの?』
そんな事口が裂けても聞けない。
(もう…どうしたらいいの…?)
「桜子ちゃん、今日は帰ってゆっくり休みなさい」
「え…」
バックルームを出ると、直ぐ様叔父さんにそう言われた。
私は「大丈夫」だと告げたが、「体調管理も社会人の立派な仕事だよ」と諭される。
「叔父さん…ごめんなさい」
「マスターだろ?…誰だって体調が悪い時はあるもんだし、気にしなくていいから」
「はい…マスター」
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