第14章 疑惑と嫉妬
「へぇ…ちょっと妬けちゃうな」
俺の言葉を聞いた紫さんは、そう呟いてビールを一気に飲み干した。
「あの頃は年上ぶってたけど…私、結構皐月の事好きだったのよ?」
「……、」
「でももう地方に就職決まっちゃってたし…年下にハマっちゃう自分が怖くて」
「…今、彼氏はいないんですか?」
「一応いるけど…最近は微妙な感じかな。お互いすれ違ってばっかりだし…アイツ絶対浮気してると思う」
「………」
「そーだ!こうやって皐月と会えたのも何かの縁だし、今日はとことん愚痴聞いてよね!」
「え…、」
結局その後2時間程、俺は彼女の愚痴に付き合わされた。
俺が止めるのも聞かず、お酒を呷り続けた彼女は当然べろんべろんに酔っ払って…
「うぅ…気持ち悪い……」
「だから言ったのに…」
居酒屋を出て少し歩いた所で蹲る彼女。
俺はその背中を擦り、ハァと大きな溜め息をつく。
「今タクシー呼びますから」
「無理……今乗ったら吐く」
「でも…」
このままずっとここにいる訳にもいかないだろう。
せめて座って休める場所でもあれば…
そう思ったのは彼女も同じだったのか、俺の腕を弱々しく掴んでくる。
「ね…1時間でいいから休憩したい……」
「………」
「…お願い」
俺は痛む頭を押さえ、もう一度深い溜め息をついた…
(何やってんだ俺…)
飽くまでも"休憩"という名目でラブホテルに入った俺たち。
勿論下心など全く無かったが、それでも桜子さん以外の人とこんな所に来るのはやはり気が引ける。
「とりあえずお水飲んで休んで下さい」
そう言って、ベッドに腰掛けている紫さんに水の入ったペットボトルを手渡した……その時。
「っ…」
突然力強く引かれた腕。
予測もしていなかったその行動に俺はバランスを崩し、彼女の上に馬乗りになる。
そんな俺に彼女は抱き付いてきて、あろう事か首筋にキスをしてきた。
「ちょっ…」
「ふふっ、びっくりした?」
「…ふざけてないで放して下さい」
「い・や」
彼女はそう言って俺の手を取ると、そのまま自分の胸元へと導く。
「…久しぶりに私とシてみない?」
「…する訳ないでしょう」
「彼女がいるから?」
「というより…彼女以外の人に魅力を感じませんから」
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