第3章 恋は盲目、ストーカーは犯罪
「桜子ちゃん、今日はもう上がっていいよ」
「はーい」
今日はいつもよりお客さんが少なかったので、定時より少し早く上がらせてもらえた。
とは言え、外はもうすっかり暗いが…
「……?」
帰り道…ふと背後に人の気配を感じて立ち止まる。
反射的に振り返ってみたが、そこには誰もいなかった。
(気のせい……か)
そのまま気にせず歩いていると、見慣れたアパートが目に入る。
高校を卒業したと同時に一人暮らしを始めた、私の大切な根城だ。
ここに住んで、かれこれ4年が経つ。
「…?」
アパートに着き、入り口にあるポストを確認すると、一通差出人の書いていない封筒が混ざっていた。
切手が貼られていないところを見ると、このポストに直接投函されたようだ。
(誰からだろ?)
家に帰って早速その封筒を開ける。
そして私は目を疑った。
「…なに……これ…」
入っていたのは数枚の写真……どれも私が写っている。
仕事をしている時の写真…
休日にどこかへ出掛けている時の写真…
勿論こんな写真を撮られた記憶は無い。
これは間違いなく盗撮されたものだ。
「誰が……こんな……」
イタズラにしては質が悪い。
それに自分はこんなイタズラをされる覚えも無い。
一体誰が…
その日私は眠れない夜を過ごした…
「桜子さん、顔色悪いみたいですけど大丈夫ですかぁ?」
「う、うん…」
翌朝…
バックルームで着替えていると、横で可南子ちゃんが心配そうに声を掛けてきた。
結局昨夜は一睡も出来なかったのだ。
(…可南子ちゃんに相談してみようかな)
「可南子ちゃん…実はね……」
「えー!それって絶対ストーカーですよぉ!」
「可南子ちゃん、声が大きい!」
バックルームには私たち2人しかいなかったが、私は慌てて彼女の口を押さえた。
「マスターには話したんですかぁ?」
「ううん……余計な心配掛けたくないし…」
「でもちゃんと話した方がいいですよぉ。何かあってからじゃ遅いですしぃ」
「まぁ…そうだけど……」
「てゆーかぁ……そのストーカーってもしかして"彼"だったりして…」
「…え?」
「ほらぁ、あの金髪美少年ですよぉ」
「………」
金髪美少年とは、勿論リアンくんの事だろう。
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