第3章 恋は盲目、ストーカーは犯罪
「桜子さん、あの人また来ましたよぉ」
「………」
アルバイトの可南子ちゃんにそう言われ、店内の一番奥にある席に目をやると、そこには1週間前出会ったばかりの彼が座っていた。
(ハァ……またか)
「毎日来るなんて、あの人ホントに桜子さんの事好きなんですね~」
「そんなんじゃないってば。あの子は私の事からかってるだけなのよ」
茶化してくる可南子ちゃんに小声で抗議する。
どこでどうやって調べたのか、金髪の美少年――リアンくんは、私の仕事場を突き止め5日前からこうして毎日店に来ていた。
そして口を開けば…
「ねぇ…いつになったらデートOKしてくれんの?」
「………」
彼のフルネームは、高梨リアン。
お父さんがイギリス人で、お母さんが日本人のハーフだそうだ。
この店からそう離れていない、超一流大学の2年生らしい(聞いてもいないのに話された)。
そしてどういうつもりなのか、この店に来ては私をデートに誘ってくる。
「デートのお誘いならお断りしたはずです。ナンパなら他所でして下さいませ、お客様」
「…ナンパじゃねーし」
そう言って不貞腐れる彼。
綺麗な顔に似合わず、意外と口が悪い。
「…なんでダメな訳。俺が年下だから?」
「………」
まぁそれもあるけど、彼のような美少年がなぜ私に興味を持っているのか理解出来ないからだ。
からかわれていると考えるのが普通だと思うのだけれど。
「…アンタがデートしてくれるまで、俺毎日来るから」
「……、」
それだけ言うと彼は店を出ていった。
そんな私たちのやり取りを遠目で見ていたらしい叔父さんが、ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべている。
「あんな美少年を手玉に取るなんて、桜子ちゃんも罪な女だねぇ」
「なっ……叔父さん、変な事言わないでよ!」
「はははっ!一度くらいデートしてやったらどうだ?」
そういう叔父さんはとても楽しそうだ。
(そこは普通、止めるところでしょ!)
自分の姪が得体の知れない男の子と付き合っても、この人は何とも思わないのだろうか…
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