第11章 お家デート
「これにしようかな」
「ああ……それ」
私が差し出したDVDを観て、何となく浮かない顔をするリアンくん。
この洋画はラブストーリーだし、あまり彼の好みではなかったのかもしれない。
「あ…、嫌なら他のでも…」
「別に嫌だなんて言ってねーだろ」
「…リアンくんは観たの?」
「…まぁな」
「面白くなかったとか?」
「そういう訳じゃねーけど……ヒロインの恋人に感情移入出来なかっただけ」
「……、」
「ほら…貸して」
私からDVDを奪った彼はそれをプレーヤーにセットする。
そして大画面に映し出されるオープニング。
予想はしていたが、これがホームシアターという代物だ。
(リアンくんて映画好きなのかな…)
棚にも沢山DVDがあったし…
そんな事を考えているうちに本編が始まる。
『切ないラブストーリー』を謳ったこの映画。
序盤はヒロインとその恋人である男性の穏やかな日常が描かれてた。
けれど2人の間には徐々に暗雲が立ち込め、様々な障害が彼らを引き裂こうとする。
(どうしよう…、泣きそう……)
中盤は何とか堪えたが、クライマックスを迎え私の感情も昂ってしまう。
元々『切ない』と話題だったこの映画だが、それでも最後はハッピーエンドになると勝手に思い込んでいた私は、結局別れる事になってしまった2人を観てとうとう涙を零した。
(こんなの切なすぎる…)
お互い愛し合っているのに、彼女の為を思って別れを切り出した恋人。
そんな彼の気持ちが痛い程伝わってきて…
隣にリアンくんがいるにも関わらず、私は恥ずかしいくらい泣いてしまった…
「…どんだけ泣いてんだよ」
「しょ、しょうがないでしょ!」
ラストまで観終わった後…リアンくんが呆れた顔をこちらへ向けてくる。
むしろこんなに悲しいストーリーを涙無しで観られる彼の方がおかしいと思う。
「…リアンくんは悲しくないの?」
「……。観る前にも言ったけど…俺、この男に感情移入出来ねーし」
「…どうして?」
「彼女の事を想って身を引くとか意味わかんねーから。そんなん結局逃げただけだろ?彼女を守る自信も幸せにする自信も無くて」
「……、」
「…俺だったら絶対そんな事しない」
そう言って彼は、私の瞳に滲む涙を拭った。
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