第2章 大学1年 春
「日向さんって何号室?部屋の前まで送るよ」
「201号室、角部屋です」
「!じゃあお隣さんだ。俺、202号室。これからよろしくね」
「え、わ、あの、よろしくお願いします」
こんな偶然あるものなのか。
そう思いながら一緒に歩く道は案外楽しくて。
結局部屋の前で一緒に別れた。
「つっかれたぁ…」
さぁ、今日からは一人暮らし。
高望みはしない。普通に進級出来て、普通に卒業出来たらいい。
そう思いながら私はシャワーを浴びるのも忘れそのままベッドに寝転がって一日を終えるのだった。
――さて。
それからというものの私の毎日は常に一定のリズムを刻んでいた。
学校が終わると毎日部室に入ってまずは掃除。
その後に鞄の中から課題とかやったり、本を読んだり。
少しづつだがバスケ部の面々とも打ち解けるようになった。
「おーい、春香ちゃん……おったおった。ちょぉ手伝ってくれへんか」
「え、はい。いいですよー」
「すまんなぁ、マネージャー使えへんくて」
「いえ、平気です。スポーツは見るの好きですし」
現に時折こうやって手伝いも頼まれる。
折角おしゃれをしてきたとしてもだ。スカートだとしてもだ。
別に手伝うのは平気だし良くしてもらっている。
まぁ一部マネジ女子から反感は買ってるけど。
「ほんま春香ちゃん兼部せぇへん?」
「お断りします」
と、まぁ。勧誘が来るくらいには馴染んでいる。
「それじゃ、私そろそろ失礼しますね」
「あ、日向。ちょっと待て」
「?は、はい……って、わぁ、お野菜!い、いいんですか木村さん!!」
「実家から届いたんだ。いつもお疲れさん」
「わー、ありがとうございますー」
本当によくしてもらっている。
私なんかに構わなくてもいいのになぁ、とは思うけど。
ありがたいので好意は素直に受け取っておく主義だ。