第2章 大学1年 春
「私、1年の美容科。実渕 玲央よろしくね」
「1年工業科の日向 春香です」
「知ってるわ、入学式で目立ってたもの。綺麗な髪してるわね」
「全然。こんな鉄が錆びたみたいな色、綺麗なんかじゃない」
むしろこの髪の毛は私のコンプレックスだ。
机と椅子を廊下に運ぼうとしたところで実渕…さん。に、奪われてしまった。
「いいわよ、私が廊下に出しておくわ」
「あ、ありがとう…私、水汲んでくる」
「えぇ、気を付けてね」
トイレに入って水を少し流したままにしておく。
どうやら5階のトイレ自体は時々使われてはいるみたいだ。
マネージャーさんとかが使ってるのだろうかと予測して、そんなの意味ないしどうでもいいと思って考えるのをやめた。
バケツの3分の2ほどまで水を汲んだところで部室に行くと、人が増えていた。
「あ、春香ちゃん。彼も手伝ってくれるんですって」
「1年音楽科、氷室辰也。よろしくね」
「あ、わざわざすいません。1年工業科の日向 春香です」
どうやら机と椅子を運び終わったらしく2人で床の埃を掃いていてくれたらしい。
その後は役割分担をして3人で黙々と掃除を勧めた。
2人とも美人顔でなんともまぁ緊張もするが話している内に打ち解けることが出来た。
そして、掃除を終える頃には辺りはすっかり夕暮れとなっていたのだった。
「あー…疲れたわ………」
「うん、掃除ってこんなに大変だったんだね」
「すいません、お2人とも関係ないのに手伝ってもらって」
3人一緒にそのまま階段を降りて話をする。
1階の電気はまだ着いていたからバスケ部はまだ活動中なのだろう。
「いいのよー、お互い様でしょ?」
「な、何かお手伝いできることがあったら言って下さい。
私に出来ることなら頑張りますので」
「ふふ、ありがと。あ、私急ぐわね。バス来ちゃう…って2人は?寮生?」
「俺は寮かな。A棟の2階借りてるよ」
「私も同じとこ、です」
「あら、だったら春香ちゃんのエスコートはお任せね!
それじゃ、気を付けんのよ~」
「玲央も気を付けて」
実渕君(でいいと言われた)に手を振って私と氷室君は顔を見合わせると、帰ろうか、と一緒に歩みを進めた。