第3章 大学1年 冬
そんな風に過ごして1年の冬が始まった頃。
「ねぇねぇ、春香。最近氷室王子見ないんだけど」
お昼休み、すっかりいつもの待ち合わせ場所になったカフェでご飯を食べていると飛鳥から知っている顔の名前が出てきた。
「王子て…まぁ、王子様みたいだけどねぇ…」
氷室 辰也。
同じ部活棟のバスケ部で音楽科で。
飛鳥の話によるとアメリカからの帰国子女。
誰にでも物腰柔らかで優しい。
そして同じ寮の隣の部屋の人(これは飛鳥に言ってない)。
「音楽科の王子って話でモテるんだよ。いやそうじゃなくて」
「はいはい。だから?」
「部活は?」
「さぁ?ってか私はバスケ部じゃなくて天文部だし」
「でも仲良いじゃん。応援行ったりしてるじゃん」
「仲良いのは認めるけど」
はっきり言って私が仲良いと言えるのは女じゃ飛鳥だけ。
あとはみんなバスケ部の人になる。
「また噂されるねぇ、クソビッチちゃん」
「飛鳥に言われたくない」
「あはは、それもそーだわ!おっと、あたしこれから実習だった」
「がんばー、私もう講義ないから部室かなー」
「うらやま。んじゃねー!」
「また明日ー」
飛鳥とカフェの前で別れたところで実渕君に出くわした。
「あら、春香ちゃん。今から部室?」
「うん。実渕君も?」
「えぇ、そうよー。にしてもあなた、意外な人物と仲良しなのね」
「飛鳥とは高校時代からの親友。頭緩いクソビッチだけど好きな物の波長が合うから一緒にいるんだよね」
「へぇ~、私も飛鳥ちゃんと結構仲良しなのよ」
それは意外だった。まぁ飛鳥面白いし。
「あら、もしかして飛鳥ちゃんが言ってたサークラってもしかして春香ちゃんのこと?」
思わず顔の表情筋が固まった。
「黙秘で」
ひとまずそれで察してください。