第2章 大学1年 春
「えーと…」
多分、この一階のどこかに事務室か何か、鍵の貸し出しをしている場所があるかも。
「オイ」
「!は、はい」
唐突に呼ばれて後ろを振り向くと黒髪の男の人、恐らくは先輩が居た。
「新入生か、お前」
「は、はい」
「マネージャーならもういらない」
「…?あ、あの…私、運動部志望の人間ではないのですが…」
そう言うと、怪訝そうな顔をした。
私は何かおかしなことを言ったのだろうか。
「ココ通称バスケ棟なんだけど」
「そ、そうなんですか。でも、私は5階の天文部の部室に用事があるんです」
少し怖いが私は私の用事があってここに来たのだ。
違うのだったら教えてきたあの担任が悪いということにしておく。いや事実悪いと言えよう。
「…あー、そういやあったな部室。悪ぃな、勘違いして」
「いえ、平気です。それより、バスケ棟ってどういうことでしょうか?」
マネージャー志望と勘違いされる理由がいまいちよくつかめない。
そもそも、いらないと言われるほど人気があるのだろうかマネージャーなんて。
正直クソめんどくさい体の良いパシリだと思うが。
「あぁ、ここ1~4階バスケ部で使ってんだよ。なんせ学年全体で学科も人数も多いからな。体育館近いし」
「なるほど…あの、部室の鍵ってどこにあるんですか?」
「あぁ、部室の鍵ならここ真っ直ぐ行った事務室。
そこに管理人居るから声かけりゃいい」
「分かりました、ありがとうございます。…あ、私、日向 春香と言います。
今日から天文部もこちらを使わせていただくのでよろしくお願いします」
「うわ、丁寧だな。虹村 修造、こっちこそよろしく。
なんかあったら言えよ、1人なら手伝えることは手伝ってやっから」
2,3回頭を撫でられるとその人…虹村先輩は「んじゃ」と手を振って体育館へといってしまった。
ここから一番近い体育館は確か6番だっただろうか。
そう考えながら事務室に入って管理人に挨拶をした後、私は天文部の部室の鍵を入手した。