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【黒子のバスケ】星降る夜に

第6章 天文部


首が疲れて顔を上げると辰也はもうバスケ部の方に行ったようだった。
外を見ると桜がまだ少しだけ咲いている。

「やっほー春香ちゃんっ」
「ぅわ、実渕君」
「何そのお化けでもみたような反応は!」
「いや…ちょっと普通にびっくりした」

格好を見るに部活が終わったのだろうか。
なら私もそろそろ帰らなくてはいけないなと思いつつ、
今日はやけに来客の多い日だと感じる。

「辰也の代わりに迎えに来たのよ。ついでに入部しちゃった」
「実渕君も…、なんだか急に大所帯になったわ」
「学祭のモデルも受けてくれるって話聞いてね。じゃあいっそ入部した方が色々便利かなと思って」

ああ、なるほど。
私物を片付けてから実渕君と部室を出て鍵を閉める。

「でもまさか受けてくれると思わなかったわ。あなたも辰也も」
「知らない人から頼まれて断んのめんどくさそうだったから受けただけよ。辰也の理由は知らない」
「…名前で呼び合う仲なの?」
「…諸事情により」

痛いところを突かれた気がして目を逸らす。
まさかここであの日一緒に居た理由を説明はしたくない。
飛鳥と仲良い実渕君のことだ。お茶の話のネタにされる。

「でも辰也が受けた理由なんて一つだと思うわよ」
「え?分かるの?」
「大方、相手役が春香ちゃんだから」
「まぁ全く知らない相手よりはマシでしょうね」

私だって相手役が仮に全く知らない人で決まっていたなら絶対に断ってた。
辰也も同じタイプだったのかも、なんて思ってしまう。

「そうそう、私のことも名前で呼んでよ」
「玲央ちゃん」
「はい、春香ちゃん」
「なんか普通に女友達みたいだわ。玲央ちゃん綺麗だし」
「もー私は男よー。あんま油断してると食べちゃうかも」

急に顔を覗き込まれてそんなことを言われてしまう。
不覚にもどきりとした。
睫毛長いし肌も綺麗だなぁ。何よりその黒髪。羨ましい。

「じゃ、私はこっちだから。また明日ね、春香ちゃん」
「うん。またね、玲央ちゃん」

別れてから寮までの帰り道。自分の髪を見て溜息を吐いた。
あんな風になれないのはもう分かっているのに憧れることだけはまだやめられない。
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