第5章 春休み
シャワーを浴びて朝ご飯を食べてから隣の部屋を訪ねたのは9時半頃だった。
チャイムを鳴らすと同じようにシャワーを浴びた後の彼が出てきた。
「昨日も言ったけど髪は乾かしなさい」
「覚えてたらね」
「全く…お邪魔します」
「適当に座って、今お茶出すから」
部屋は確かに前に来た時よりは片付いていた。
失礼かもしれないが思わずキョロキョロして色々見てしまう。
「…ピアノの横にギター……」
なんともまぁおかしな光景だ。
「ピアノは授業で使うからね。ギターは趣味」
「へぇ…」
そう言えば彼は音楽科だ。ピアノくらい弾けてもおかしくないどころか普通なのだろう。
ただギターも弾くというのは少し驚いた。
「そっか、音楽科と工業科は場所が真逆だもんね」
「そりゃそうでしょ。ウチの学科実習中は破壊音もしてうるさいし」
それにしても男子の部屋という雰囲気ではない気がする。
いや、勝手なイメージとは違うと言うべきか。
「あぁ、そうだ。練習着、今度洗って返すわね」
「え、いいよ別に」
「私がそうしたいの。…ねぇ、本棚見てもいい?」
「うん、いいけど…ほとんど楽譜とかだよ?」
立ち上がって本棚を物色する。確かにほとんどが楽譜だ。
小説と言える小説はほぼ無いに等しい。あとは雑誌くらいか。
どうやら見た感じジャンルでまとめているみたいだ。
下の方には雑誌もある。
「先に言うけどいやらしいやつは無いよ?」
「探す前に言われたら張り合いがないじゃない」
折角探そうと思ったのに。
飛鳥曰く「エロ本持ってない男はいない。
本を持ってないんだったらパソコンの中に必ずデータがあある。
それすら無ければ男にしか興味が無い」らしい。
「女の子が来るって分かってるから片付けるに決まってるだろ?」
「まぁそうでしょうけど。そう言えばどういう子が好きなの?」
「春香みたいな子が好きかな」
「あぁ、可愛い系統の顔が好きなの」
それでも片付けるということは持っているということか。
今度はアポなしで遊びに来ようか。
「ねぇ、他の部屋に本はないの?」
「あるよ、見る?」
「ぜひ」
これは私の持論だが本棚にある本で大よその人柄は分かる。