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【黒子のバスケ】星降る夜に

第5章 春休み


少し悩んだ末に一応注意はしておこうと思った。

「寝てる時に脱ぐのはどうかと思う」
「だって服って邪魔じゃない?」
「その感覚がよく分からないから邪魔だとは思わないけど」

むしろ服が邪魔なんて飛鳥じゃないんだからと思う。
どうして私の周りはそんな人間ばかりなのか。
アイツの場合は最終的に脱ぐから邪魔なんだろうけど。

「うーん…そう言われても…部屋とか家だと寝るときはいつも着ないし。流石に今日は女の子と一緒だしって思ってたんだけど気付いたら脱いでたみたいだし」
「…本当にあなたそのうち言いがかりでもつけられそうね」
「女の子と同じベッドで寝ることないし困ったことはないよ」
「へぇ、意外だわ」

言った後で失礼だったかとも考えるが本音だった。
音楽科の王子様。女がほっとくわけがない。
事実ファンクラブまである。

「別に好きでもない女の子を抱く趣味はないよ」
「あら、そうなの」
「うん。それに俺、好きな子いるし」
「へぇ」

それは更に意外だった。
一体彼が好きになる女子というのはどんな人間なのか。
多少は気になるけれどどうだっていい。
私には関係のないことである。

「お腹空いたなぁ…」
「それもそうだね。そう言えば春香は好きな食べ物とかある?」
「特にないけど羊肉とか粒あんとか豆類はあんまり好きじゃない。食べれるけど苦手な物は出てくるけどこれといって好きなものはないわ」

それを言うと辰也は面白そうに笑った。
何か変なことを言ったか。そう考える。

「いや、普通だったらケーキとかマカロンとか、そういう回答だったから。好きじゃないものを答えられたのって初めてで」
「う…仕方ないでしょ。そもそも、男とこんな長時間話すのってあんまり経験が無いのよ」

そう言われてみて気付く。好きなものを聞かれて嫌いなものを答える人はそういない。
それに久々にこんな長時間異性と一緒にいた。
いつも部屋にこもるかここにきても部活の手伝いかですぐに帰っていた。

「好きなのは、カレーとか。肉じゃが、とか。野菜がおっきい方が好き。
ケーキとかならタルト。ミルクレープとか。甘すぎるのは苦手だわ」
「そうなんだ。覚えておく」

なんでだろうか。急に緊張してきた。
出来ることならさっさとこの場を去りたいほどだ。
居心地が悪い。早く逃げたい。
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