第5章 春休み
腹黒王子もとい氷室辰也とはパーティーの日以来顔を合わせることもないまま春休みに入った。
とはいえ相変わらず暇を持て余すし動かないとすぐデブになるという思いから午後からいつも通り部室へと向かっていた。
「あ、直ってる」
ようやくエレベーターが直ったようだった。
思えば入学してから長かったなと思う。
修理ついでに中も綺麗にしたんだろう、使い心地が良い。
「あれ?」
クセでドアノブを回すと簡単に回った。部室の鍵があいている。
いつもは自分用に許可を得て作ったスペアで開けているのに。
「こんにちわ、春香さん」
「なんでいんの部活はどうした今すぐに出ていけここは私のテリトリーだこんにちわ辰也」
本棚を物色する男がいた。それも随分と久し振りに言葉を交わした。
なんでこいつがここにいる。今すぐに出ていけ。
「バスケは今日自主練だからね。それに、今日から俺も天文部の部員だし」
「…は?」
「昨日入部届けを出してきたんだよ」
「はぁぁぁあああ!?」
さようなら、私のサボり場!!こんにちわクソみたいな生活。
「それより、名前で呼んでくれた。覚えてたんだ」
「呼べって言ったのアンタでしょ」
荷物を置いていつも通りの席に着くと真正面に彼は座った。
その動き1つ1つが本当に優雅だと思う。
「春香さんっていつも何してるの?」
「大体本読んでる。そこの本棚はもう全部読んだ。
あとは飛鳥とお茶会」
「なるほど。だからカップが綺麗に揃ってるんだ…3つあるけど」
「ピンクは私で飛鳥が赤で青いのは実渕君の。
実渕君と飛鳥が仲良いのよ」
そもそも。今日だって本をゆっくり読もうと思ってきたのだ。
部屋でも本は読めるがつい時間を忘れてしまうから気が付くと朝みたいなのを避けるために部室に来ている。あとデブ防止。
「そんなに太ってないと思うけど。普通じゃないか?」
「食ったら食った分太るタイプなの。適度に運動しないと太る」
女子と言うのは中々大変なのだ。