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【黒子のバスケ】星降る夜に

第4章 大学2年次 春


「氷室君か今吉選べって言われたら断然今吉だわ」

分かりやすい方が良い。
分かりやすいぐらい黒い方がいい。

「…今吉のことは呼び捨てなんだね」
「別にどう呼ぼうが関係ないじゃない」

影でぐらい呼び捨てでも問題ないだろう。バレてそうだが。
そもそもだ。別に私らは付き合ってるわけでもないし彼に何故こんなことを指摘されてるのかも分からない。

「シュウのことも呼び捨てだったし」
「…めんどくさい人間ね。なんて呼んでほしいのよ」

そんな風に少し拗ねた言い方をされても困るのはこちらだ。
めんどくさいなと思いながら一応聞くと目に見えるほど彼らしくもない真っ黒で少し怖い笑顔を浮かべている。

「下の名前、とか」

これはどう考えてもそう呼べと言ってる。
しかしここで重大な問題がある。

「覚えてない」

飛鳥は王子呼びだし私も氷室君呼びだし周りも苗字だ。
唯一名前で呼んでるのは多分虹村くらいだろう。
だがいかんせんそんな頻度で聞いてるわけでもなく。

「辰也。人には下の名前で呼ばせるのに覚えてないって」
「うるさいわね。別に対して接点もない人間のことなんて一々覚えてないわよ」

ようやく寮が見えてきた。
さっさとシャワーを浴びて寝たい。

「春香さんにとって俺はただのお隣さん?」
「それ以上に何があるの?」

ただのお隣さん以外にどんな存在なのか逆に聞きたい。
それに私のことを彼はどう思っているんだ。
思わず呆れた様な視線を向ける。

「俺にとって春香さんは恩人だし…あとは、部活の方にもよく顔を出してくれて手伝ってくれる人。
それから凄く可愛いと思ってるよ」
「それはどうも」

別に今更可愛いなど言われても照れることはない。
言われ慣れている。慣れすぎている。
そしてその自覚だって自分にもついている。
中学から大学の今までその言葉は何度も聞いてきた。

「だから心配」
「は?」
「その自覚があるくせに遅い時間に1人で帰ろうとするし、平気で男だらけの空間に入り込んじゃうし」
「別に悪いことしてるわけじゃないんですけど」

まるでお説教されてるみたいだしそこまで言われる義理もない。
別に私がどこに居ようとも勝手だ。
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