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【黒子のバスケ】星降る夜に

第4章 大学2年次 春


「なんで?」

わりと真剣になんでなのか。
時刻はまだ9時を少し過ぎたくらいで別に遅い時間でもない。
このぐらいの時間ならまだ電車だって走ってるし、外に出ればタクシーだって捕まえられるだろう。

「女の子を1人で帰す男がどこにいるの」
「自慢じゃないけど男が居て送ってもらえなかった経験はないのよ」

なにせ人より見た目が良いから。

「…俺、春香さんには危機感ってものが無い気がする」
「無いんじゃなくて薄いのよ、失礼ね。…とにかく、私は帰りたいし…送ってくれるならお言葉に甘えるわ」

ここで下手に文句を言っても仕方がない。
存外この男は頑固だと言うのを私は知っている。

「それじゃ、またね。えぇっと…紫原、は長いし…敦君」
「うん、またねー。春香センパイ。室ちんもー」

彼に手を振って別れを告げてから一応何人か見知った人たちにも挨拶をしておく。
ドレスも着替えてから外へ出るとやけに空気が美味しく感じた。
それだけ人が密集していた場所にいたということだろう。

「あれ、氷室君はスーツのまま?」
「うん。一々借りるより楽だし」
「それもそっか。……ねぇ、氷室君」
「何かな、春香さん」
「今の今まで全く気付かなかったけど、ここって学園の近くよね」
「うん。歩いて来ようと思えば来れる距離かな」

学園の隣のホテルだったということだ。
まぁ歩いて来ようと思えば来られるのであれば歩こう。
わざわざタクシー代を払うのもばかばかしい。
そう思いながら2人で夜道を歩き始めた。

「ねぇ、春香さん」
「何かしら」
「送り狼って言葉知ってる?」
「馬鹿にしてる?」

なんでそんな真剣な顔で問うのか。
そこまで馬鹿ではない。馬鹿だと思われているのならそれこそ心外だ。

「そもそもあなたが送っていくって言ったんじゃない」
「そりゃ悪い虫がついたら心配だからね。
かといって、こんな可愛い子が隣にいて下心が無い男がいると思う?」
「氷室君って何を考えてるか分からないタイプだもの。分かるわけないじゃない」
「そんなに分かりにくいかな」
「分かりにくい。いつもニコニコしててその上ポーカーフェイスだもの。下手な女より厄介ね」

同じように何考えてるか分からないで言えば今吉先輩もだが。彼とはまた系統が違う。
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