第4章 大学2年次 春
外は思っていた以上に涼しくて、ドレスにショール一枚じゃさすがに寒い。
まだまだ春は遠そうだなぁ、なんて思って空を見上げる。
「あまり、よく見えないね」
その言葉と共にふわりと肩に何か振れる感触。
「!わ、ひ、氷室君」
「こんばんわ、春香さん」
彼が熱を出して以来の会話だったと思う。
「来てたんだ」
「うん、ただ飯にね。虹村たちに誘われて」
「なるほど」
相変わらず綺麗な顔だなぁ、と。
そして、少しだけ近い気がした。多分靴のせいだろう。
「大丈夫、寒くない?袖通してもいいよ」
「そう?……温かい、ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして。でも、なんで外に?」
「ちょっと人に酔って。氷室君は?」
「ここに春香さんに似た後姿があったから。あれ以来あまり話すことなかったし」
それじゃまるで私と話しに来たみたいではないか、と思う。
ただ、あれ以来休んだとかそういった話は聞いていないし今のところあの部屋にいて平気らしい。
「あの部屋って…少しは片付けたよ?」
「…部屋が汚い人の片付けたは片付けたに入らない」
「手厳しいね」
「いつも通りよ、失礼ね」
そう言って、また空を見上げた。
氷室君も同じように隣にきて空を見上げた。