第3章 大学1年 冬
「ねぇ、ここって」
「私の部屋」
「やっぱり…」
「めんどくさいし話はあと。折角温めて来たのにまた冷まして私に手間かけさせるつもり?」
自分の分は部屋の机によけて彼の分はお盆に乗せたまま膝に置いた。
「多かったら残していいよ、自分で食べるから。いただきます」
うん。本当に器用だ、美味しい。
彼の側でもくもくと食べていると、いただきます、と声がしてようやく食べ始めたようだ。
「…おいしい」
「当たり前です」
物凄い勢いで食べ始めた。そんなに美味しかったんだろうか。
それはそれで嬉しいけど、とか思っている内にごちそうさまでしたと言われた。
「2日ぶりのご飯、美味しかった」
「は!?え、それまであの部屋で死んでたの?」
綺麗好きの私には確実に生活できないあの部屋で。
とは思っていても口にはしない。
「いや…結構前から食欲自体がなくて気付いたら熱出て倒れてた、かな」
「その内死にそうね」
「はは、返す言葉がないよ」
自分も食べ終わり、彼の分の食器をテーブルの上に置いて立ち上がろうとしたところで声をかけられた。
「どこ、行くの」
「?食器下げて体温計取りに行こうと思ってた」
「出来るならまだ側にいて欲しいな」
「嫌よ、うつされたくないもの。ちょっとぐらい待ってなさい」
そう部屋を出てキッチンに食器を下げると、一気に緊張が解けた。