第11章 ぼくらのサイド再度ストーリーは突然に
「やっくん孤爪くんがデレたどうしよう!」
「よかったな」
デレたらデレたで動揺するよ、これ。だって孤爪くんが頭撫でてくるとか思わないし!
「今のでご飯3杯いける、おかわりできる」
「ご飯のお供かよ」
「そんなものです。あ、夜のオカズにはしないよ」
「聞いてねぇし!それ男のセリフだ!」
誤解のないよう言っただけなのに……頬っぺた少し赤いよ?恥ずかしがってるやっくんおいしい、ぐもぐも。
「女にも性的欲求はあるんだよ、やっくん知らないの?」
「うぐ……」
よし勝った。
「恥じらいやっくん、チョー可愛い」
「っかわいくねえ!」
遊ばれてることに気づいているのかいないのか、抱きついているわたしを引き剥がしもしないやっくん。
たぶんこれ、動揺しすぎて離れるという選択肢が頭からぶっ飛んでるな。
さて次はどうしよう?なんて考えていたら頭頂部にぺしんっと軽い衝撃がきた。
………黒尾くん、ちょっとぽんぽん叩きすぎじゃない?わたしの頭はバレーボールじゃないんですけど。
「その辺にしとけニャンニャン。あんまり夜っ久ん、イジメんな」
じとっと睨み付けても、黒尾くんの余裕たっぷりな表情は崩れない。
わかったよ。わかったから鼻つまむのやめて苦しい……………ちょ、やめろってばよ、しつこい!
頭をぶんぶん左右に振っても変わらない息苦しさに、ぷはっと口を開ければ小さい何かを入れられて反射的に口を閉じる。と同時に鼻の痛みと苦しさもなくなった。
お口にぽいされたそれをころころ舌先で転がすと、じんわり甘さが広がり苺の甘酸っぱい香りがやわらかく鼻を抜ける。
「いちご飴?」
「惜しい。正しくは苺ミルク飴、だ」
「なんでもいいから、そろそろ離れてくれニャンニャン……」
……ん?なにか言った?
飴玉を口の中で味わっていると黒尾くんに両肩をつかまれ、ゆっくり後ろへ引っ張られたのでとくに抵抗もせず後ずさり、体は自然とやっくんから離れた。
苺ミルク、うまし。
「夜っ久ん、今度から飴でも常備しとけ。ニャンニャンをおとなしくするには食いモン与えるのがいちばん効果的だ」
「…動物か」
「む?」
なになに?飴玉舐めるのに夢中で聞こえなかったよ。
首を傾げて2人を見上げれば、なんでもないと頭と背中をぽんと叩かれた。