第10章 ロングとショートの間はボブさん
なんだいったい、どうした2人とも……そう思っていたら右の頬っぺたを包むようにそっとなにかが触れてきて、瞼をゆっくり開けたら。
視界いっぱいに映る…そこはかとなく色気を感じさせるやっくんの真剣な表情にびっくりして、思わず目を見開いて凝視する。
ああ、頬っぺにあるのはやっくんの手だったのか。ほんのり湿ってるけど……なに、暑いの?そういえば全体的に肌が赤みがかっているような。
「……やっくん。熱あるんじゃなぅぐっ?」
やっくんとの距離をゼロにして熱を確認しようと額に額をくっつけた瞬間、頭をガッと掴まれ後ろへ押し退けるように引き剥がされた。
いっだあ!!ちょ、首ぐきっていったんですけど!?
「はい終了ー。ニャーちゃんはちょっとコッチこようか」
「首っ、首やられた、ぐきって、黒尾くんのボゲ頭…!」
「おイタした罰です。ちったあ反省しろ」
頭を掴んでいた大きな手が離れたと思えば、ぺしっと額をはたかれた。
また首に衝撃がっ!!
「……いちゃい」
微妙に痛みが残る首の後ろをさすっていたら、上から黒尾くんの手が重なって。
「痛いの痛いのとんでいけー……ハイ、これで大丈夫ですよー。お嬢ちゃん」
「子供か。そんなんで騙されるか」
「おとなしく騙されるならこのぐんぐんチョコバーをやろう」
「よし騙された」
なんて素敵な小腹サポーター。
あっさり騙されて黒尾くんが持っているチョコバーをもぐもぐしながらやっくんを見たら、顔を片手で覆ってガックリ項垂れていた。
あれ、どうしたの?
「もぐむぐ、やっふん、どうしらろ?」
「………」
「ニャーちゃん、飲み込んでから喋りなさい」
ごめんなさいママン。急いで残りをもぐもぐごっくん!あーおいし。
「やっくん、ほんとに熱あるんじゃない?熱いならブレザー脱いだ方がいいよ」
「は?……いやべつに、熱はねぇけど」
のっそり頭を上げて怪訝そうにこちらを見るやっくんの顔は、たしかにもう赤くはない。