第10章 ロングとショートの間はボブさん
「それで海くんの彼女は!?」
「ああ……あー、なんつーか可愛い感じなんだけど俺の好みじゃなかったかな」
「夜久は小柄でショートカットの可愛いこが好きなんだよなー?ニャンニャンみたいな」
「ううるせえぞ!黙れ黒尾!」
「あれー、なに動揺しちゃってんの。アヤシー」
「え、なんだやっくんそうだったの。ちゅーでもしとく?」
「しない!!」
真っ赤な顔して眉つり上げるやっくんの反応が楽しくて、小さく笑いながらその首にぎゅっと抱きつく。
やっぱりやっくんいい匂いだな、シャンプー?リンス?コンディショナー?石鹸とか言われたらどうしよう……根本的な体臭問題勃発しちゃうよ。
「そんな遠慮しなくていいのにー」
「してねーよ、ニャンニャンはもっと遠慮しろ」
「お前らちょっと近すぎない?」
何故かそわそわしだした黒尾くんは、とりあえずスルーして。
「わたしが遠慮したら、ただの大人しい子だよ。変態のエサになって事件発生、全国ニュースで放送されちゃうよ。やっくん匿名モザイクで友人コメントしてくれるの?あれ知り合いにはバレバレだよ?」
「悪かったからリアルに最悪な未来予想図やめてくれ」
ごめんね?やっくん、顔色悪いよ……でもそんなにリアルだったかな?嬉しくない。
「…否定できねーところが怖いな」
黒尾くん任せろ。ちっさい頃から痴漢されたり誘拐されそうになったり変質者に遭遇したのは伊達じゃない。
……あれ、なんか涙が出そう。男運が上がりますようにってパワースポットでお祈りしてこなくちゃ。
それとも「衛輔くんをお嫁にください」って夜久家に土下座しに行った方が早いかな。
「そんなワケで、やっくんちゅー」
「ニャンニャン…」
「どんなワケだよ…」
呆れた声なんて聞こえません。
抱きついているやっくんの顔を覗き込み、そのまま至近距離で瞼をとじる。
「…っ……」
…1…2…3……て、あれ?
微かに息を飲むような音が聞こえただけで、なんのリアクションも言葉もない。