第10章 ロングとショートの間はボブさん
こんな教室で完璧な死角が発生するとか普通ありえないだろ……まぁいいけどね、気楽にサボれるし。
「はい、プリント。ニャンニャンさん、なんかいいことでもあった?」
「海くん、わかりますー?」
「うん、朝からずっとにこにこしてるから」
あらやだ、そんなに顔ゆるんでた?……ちょっと引き締めようかな。
頬っぺたに手を当てると少し力を入れてキリッとした表情を意識してみる。できたかな?うんたぶん微妙。
海くんはクラスで唯一まともに会話してくれる男子…つまりとってもいい人だから、実際は気持ち悪くニヤけていても素直に気持ち悪いとは言わないかもしれないからね!
油断せずいこう。違った、謙虚にいこう。
「実は今日、髪を切りに行くんだー。がっつり短くしてブリーチして金パにするの」
「そうなの?……長い髪さらさらで綺麗だから、なんかもったいない気もするな」
「そうですかね」
背中の中ほどまである、ありきたりな黒っぽい焦げ茶色の髪。
ただ切らずにダラダラ伸ばしていただけなんだけれど、海くんに褒められたら悪い気はしないな。
「まあでも、ニャンニャンさんならきっとショートカットも可愛いだろうな」
にこにこしながら、さらっと言われました。
なんとっ……こんなところにイケメンがいたよ!
「海くんありがとう。好きです付き合ってください」
「俺もニャンニャンさん好きだよ。でもごめんね、彼女いるんだ」
「彼女さん、うらやますぃー!」
フラれたよ、秒殺だったよ!まあ半分冗談だったけどね!これだけのイケメンだ、彼女がいてもおかしくはない……今度写メとか見せてもらおう。
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よし、待ちに待った放課後きたー。
うっかり授業中におやつしてたのバレてお説教くらっちゃったよ。
まさか鉄壁のガードが主に目の前に座っている海くんによるものだったとは……そりゃ海くんが当てられて前に行ったらバレますよね。
次からは飴ちゃん程度にしておこう、さすがに焼きそばパンはやりすぎた。青のりつくしね。
「ああ急がないとっ、せっかくの予約が!」