第10章 ロングとショートの間はボブさん
「え、いつの話だよ?黒尾。海に紹介されたのが初めてじゃねぇの?」
「夜久もそんとき一緒にいたんだけどな」
「一応ね?会ってはいるんだよ、やっくん」
でもまあ、気づかないよね。その日の放課後に、わたし激しくイメチェンしたからね。
そう考えると、本当によく気づいて覚えてたな黒尾くん。
「……黒尾くんストーカーなの?なにそれ怖い」
「真顔で面白くない冗談言わないでもらえるかなー?ニャーちゃん」
「しゅみましぇん」
お願いだから頬っぺた両側からぎゅってしないで変顔になる。
タコ口とか絶妙に痛いし黒尾くん馬鹿力だし、わたしの顔を変形させる気ですかコノヤロー。
「それで?結局いつの話なんだよ、俺マジでわからねぇんだけど」
やっくん、ちょっとくらいわたしの顔の心配もしてください………たまに変なところでクールだよね。
「……たしか、俺と夜久と海がバレー部の見学で出会って…親睦会的なアレで何か食いにいこうとしてた時だったか…」
「ああ、あんときか!黒尾の印象最悪だった!」
「そりゃお互い様だ」
「2人ともすごい顔で言い合いしてたもんねー…海くんは終始にこにこしてたけど」
あー………懐かしい。
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音駒高校に入学してから早くも数日が経った。
慣れない一人暮らしにまだまだ不安はあるし何故か男子たちからは遠巻きに見られたりしているけれど、とりあえずクラスの女子はみんな優しいから万事おっけーだ。
それにバイトも決まったし、今日の放課後は念願叶って予約できた人気の美容室へ行けるし、くじ引きで窓際最後尾の席になれちゃうし。
幸先いいですなー。
とか言いつつ、ほんとはこの席めっちゃ黒板見えづらいんですけどね。みんなでかいよなんで男女混合席なの?先生から絶対見えてないよね隠れてるよね。