第10章 ロングとショートの間はボブさん
「うう……」
「大丈夫か?ニャンニャン」
「ガンバレ傷は浅いぞ」
やっくん心配ありがとう、黒尾くん面白がるな滅べ。
「また購買行けなかった…にゃんサマフィーバーいつ終わるの…?」
お昼休憩中。わたしはまたもや机とべったりラブっていた。
わたしの前の席にはやっくん、右隣には黒尾くんというのが今年に入ってからのお昼の定位置だったりする。
毎回、人の席を当たり前のようにぶん取っちゃってごめんなさい。とも思うが、不思議なことに1度も文句の類いを聞いたことはない……黒尾くんなにかした?世渡り上手そうだもんね。
「人の噂も75日って言うし、あんま気にすんなよ」
「あと2ヶ月以上あるけどな」
「黒尾、お前少しはフォローしてやれって」
「悪い、面白くてつい」
やっくんもっと言ってやれ!黒尾くんお前という男はほんっとにもう、ほんっっっっと今すぐ天に召されろ。
「落ちつくまでずっと購買パンは食べられないのかー……安くておいしいのに」
コンビニも毎日は高くつくしスーパー遠いし、お得なおにぎりも連続は飽きるし。
豊かな食生活を返してください……しくしく……手作り無理なんです死んじゃう。
「つーかさ、そんなに困るんなら『にゃんサマ』な外見どうにかすればいんじゃねーの?」
「それもそうだよな」
なんだ珍しくまともに答えてくれたな2人とも……ふむ。
「たとえば?」
「金髪やめろ」
「カラコンもな」
はい却下。
「金パはわたしのアイデンティティー!!」
「前は普通に黒髪ロングだっただろ!」
「カラコンはいいのか」
カラコン面倒だから、そろそろやめようかなって思ってたんですよやっくん。
………ん?
「なんで黒尾くんがわたしの前の髪型知ってるの?」
1年の頃はクラス別だったし、仲良くなったのも今みたいな金髪ショートにしてからだったのに。
ほわい?
「お前、初対面で豪快に吹き出しただろ。嫌でも印象に残るわ」
「それは失礼しました。まさか覚えてるとは思わなかったよ、一瞬目が合っただけだし」
あのときのわたしは通行人Aみたいなモブ的存在かと思っていたよ。