第8章 後悔は先に立たないのにやっちまうことは多い(後編)
「……なんかいつもと違うね、ニャンニャンさん」
「へ?」
頭を抱えかけた手をそのままに見上げれば、ピリッと破かれるお菓子の袋。
ふわんと微かに濃厚なバターと林檎の甘い香りが鼻をくすぐり、条件反射で唾液がじわり溢れてくる。
「いつもより……うるさい?クロみたい」
「うるさい…」
まじか黒尾くん並か!たしかに学校では毎日のように彼らと騒いでいるけど否定できないけど黒尾くん並か!
って、あああミニアップルパイが孤爪くんの口の中へ消えていく…1個…2個…
「…3個目」
「………あげるから、そんな顔で見ないで」
じぃっとミニアップルパイの行く末を見守っていたら、孤爪くんがわかりやすく溜め息を吐いた。
「そんな顔?」
「食べる直前でおあずけされた小型犬みたいな顔」
いやそれまさに今の状況どんぴしゃ……ってことは孤爪くんがわたしのマスターか。
うん、悪くない。
「…なんでニヤけるの……いらないなら、全部食べるよ」
「いる!待って食べるからっ」
再び慌てながら両手を差し出せば、上向けた掌にそっと置かれた小袋。
嬉しくて早く食べたくて顔を近づけふんふん匂いを嗅ぐと、大きく顔を背けた孤爪くんが口元を腕で隠して………震えてらっしゃる。
え?