第8章 後悔は先に立たないのにやっちまうことは多い(後編)
あれ、もしかして。
「孤爪くん笑ってる?」
「…っ……わらっ、て…ない……ふっ……」
「いや笑ってるよねそれ、全然ごまかせてないからね」
「…………はあ……笑ってない」
意地っぱりか。
やはり素直にデレてはくれない……でも隠しきれない可愛さがちょいちょい見えたりするのが孤爪くんの愛らしいところだったり。
「…じゃあ…ほんとに、もう行くから」
「あ、うん!これありがとう」
半分中身が残っている袋を持ち上げにひっと笑えば、孤爪くんは小さく頷いて…その唇はゆるやかな笑みを形どった。
「…またね、ニャンニャンさん」
そう言って胸の辺りで小さく手を振り、この場を去っていく孤爪くん。
その背中を見送ると、わたしは無言で自販機の取り出し口から放置していた紙パックを引っつかんで走り出した。
なんだあれ、なんだあれ、なんだあの笑顔いきなり反則技すぎるんですけど!!!!
おまけにあの手の振り方なんて恋する乙女か!
いやわかってる。孤爪くんは周りを気にしてるだけなんだ、恥ずかしいだけなんだ、わかってるけどでもこれはっ…
「脳内会議ものだ…!」
議題は『孤爪研磨が可愛すぎる件について』。
はい!孤爪くんの困り顔かわいいです!
はい!孤爪くんの恥ずかし顔おいしいです!
はい!孤爪くんの笑い顔とかもう最高です!
ああもう、孤爪くん可愛すぎて本当に…
「つらたん!!」
つい口走った叫びは、誰に聞かれることもなく風に流され消えていった。と思いたい。
結論………可愛すぎるのも罪ですよねいやまじで!!