第8章 後悔は先に立たないのにやっちまうことは多い(後編)
「……孤爪くん?」
マイスイートにゃんこな孤爪くんが、うちの制服着てるっ……!!
ラフな私服もいいけどやっぱりシャツにネクタイとかいいですよね制服決めた人ぐっじょぶ。
欲を言わせてもらえるなら、そのシャツとネクタイを少し乱してほしい切に願う。
「後ろ姿で、なんとなくそうかなって思った」
後ろ姿で気づいてもらえるとかもう感動ものなんですけど。
店で会うたびゲームの話題をもちかけ焦らずじっくりことこと煮込んだスープ……違った。
つれない態度にもめげずこつこつ信頼度と好感度を上げてきてよかった!
「よくわかったね……すごいびっくりした。ステータス異常おこしかけた、てか少しなってるよ今」
いやほんとに。
驚きと興奮で血圧と心拍数やばかったっていうか動悸は今もやばいほど激しい。
ゲームだったらアイテムか魔法ですぐ治せるんだけどな。
………少しの沈黙。
こんな間にもすっかり慣れたもので、のんびり待っているとなにか考えるように視線を落としていた孤爪くんの口がゆっくりと開き。
「治すのは無理だけど……回復アイテムならあるよ、いる?」
「えっ、そんなのあるの?欲しい!」
「ちょっと待ってて…」
まじでそんなのあるんですか……昔発売されたポーションドリンクみたいな?
あれ不味かったって評判だよね、どんな味なのか逆に気になるよ。
少しわくわくしながら見ていると、リュックを漁っていた手をこちらへ差し出してきた孤爪くん………お?
「お菓子?」
黒尾くんよりは小さいけれど、わたしよりは明らかに大きいその手が指先で軽く摘まんでいたのは、『ミニアップルパイ6個入り』と可愛くパッケージされた小袋。
「食べたらHP回復するよ」
「……まぁ、たしかに」
「いらない?」
「いるっ、いります!」
いらないわけがない。
孤爪くんがくれるものならなんでも貰うっ、なんなら使い捨てのゴミでも受け取りますとも!
変態と言うなかれ。
引っ込めかけられたお菓子に慌てて、その手首をガシッと捕まえた。