第4章 WELCOME TO NEKOMA HIGHSCHOOL
「あの子、もう来ましたか?」
「あの子って?」
「猫目がかわいい孤爪くんです」
「あー、きみのお気に入りの?んー…今日は見てないよー」
ほわほわ笑いながら、あの男の子をかわいーって言うのはきみぐらいだよねーなんて言葉に、そうですかねー?と生返事をしながら店内と出入り口を交互に眺める。
平日の夕飯時はさすがにお客さんが少ない、というかほぼいない。目的の人物もいないし、少しがっかりしながらレジカウンターに貼ってある新作ゲーム一覧へ視線を落とす。
「予約限定ゲームの入荷日だから、来るかなーって思ったんですけど…」
「ふふっ、残念だったねー」
色白の綺麗な手がこちらへ伸ばされ、優しく頭をわしゃわしゃと撫でられた。
その拍子に肩口でひとつに緩く結われている髪がやわらかく揺れて、なんだかほんのりいい匂いがする。
香水だろうか?さすがリア充な大学生は女子力が違う………この人、男だけど。
「あー、ゲーム大好きだから絶対今日来ると思ったのにー、久々に会えると思ったのにー」
「ラインしてるんでしょー?」
「してますけど昨夜もしましたけど声が聞きたい姿が見たいんですよ」
「それってさー……あ、待ち人来たみたいー」
ちょんちょんと肩をつついてきた細長い指先を目で追えば、自動ドアから入ってくる猫背気味の男の子の姿が視界にうつりシャキッと背筋をのばした。
いつも伏せがちの顔がほんの少し上がって、こちらを見た彼の目が驚いたように一瞬だけ大きく開かれる。