第3章 終わり美味けりゃすべてよし
「やっくん、はい撮るよー?少しかがんで」
「おう、これでいいか?」
「えっ、俺は?」
慌てる黒尾くんの言葉は無視してひとまずやっくんとのツーショットを素早く撮ってもらい確認する。
かがんだ体勢でわたしの両肩に手を置き、ニカッと無邪気に笑っているやっくん。
「天使か……やっくん、これわたしにも送っといて?」
「わかった。そういえば初めてだよな、にゃん太と一緒に撮ったの」
嬉しそうに言うやっくんに、うっかり胸がきゅんとしてしまった。胸きゅんだ。
癒し………いやいや、にゃん太って誰だよ。おいそこのデカイやつ笑うな縮め。
「黒尾くん画面からハミ出しすぎなんですけど」
「にゃん太が小さすぎるんじゃねぇの?」
「あ、すいませんもうそのまま撮ってくださーい」
「コラ待てニャンニャン、首チョン切れるだろうが………ほい、これなら問題ないデショ」
ひょいっと軽々と黒尾くんはわたしを抱き上げた、ら周囲のお嬢さん方から悲鳴が上がり興奮した様子でスマホをかまえられた。
あの、連写音が激しいんですけど………なんでそんなに盛り上がってるの?人がお姫さま抱っこされてるところを撮ってなにが楽しいの?
乙女心はいつの時代も複雑怪奇摩訶不思議アドベンチャーだ。
「黒尾くん……なんだかとっても大騒ぎなんだけど」
「ああ悪い……これは予想外だわ」
「……よし、逃げるか」
やっくんのその言葉に三人で顔を見合わせて小さく頷き、そのまま黒尾くんを筆頭にダッシュで体育館から逃げ出したのだった。
「あ、荷物忘れた!帰れない!ジーザス!」
「今は無理だ!諦めろにゃん太!」
「うぉい!足止めんな捕まりてーのか!」
にゃん太じゃないからやっくん!黒尾くんわたしもう駄目だムリ抱えて逃げて頼むよ運動部!