第3章 終わり美味けりゃすべてよし
そんな現実逃避をしている間にも、滞りなく撮影は続けられている……わたしとの。いや、にゃんサマコスプレをしたわたしというのが正しい。
……まあね。たしかに身長低いし金髪ボーイッシュだしお子様体型で女性特有の丸みもなくてひょろっとしてるし青のカラコン愛用しているけれど、にゃんサマに憧れているわけでもなければ真似しているつもりなんてミジンコ程にもなかったんだよ。
着替えた姿を鏡で見て「なにこのドッペル具合ぱねぇ」とかうっかり絶望にも似た感動を覚えたくらいなんだよ。
だから、だからっ………
「そんな目で見ないでくださいやっくん」
「いや、その、すげー似合ってるぞニャンニャン」
フォローになっているようでなってないよ!生温かく見守らないで、優しく肩を叩くのやめて泣きそうになるからっ…。
数少ない仲のいい友であり常識人な夜久くんから情けを頂戴して思わずマジ泣きしそうだ。
「そうそう。笑えよ?ニャーちゃん」
「…『喜べ、この爪の餌食にしてやる』」
このニタニタ笑いを浮かべている胡散臭い男…黒尾くんの顔に本気の猫パンチをお見舞いしてやりたい。
今なら小道具の爪がいい仕事をしてくれることだろう。れっつぱーりぃ!……あ、ゲーム違った。
「ぶっひゃひゃひゃ!り、リアルにゃんサマっ…!」
「『僕の前に跪け』」
仁王立ちで言ってみる。ほんとに貴様そこに直れ、踏んづけてやる。
ちなみに今のもさっきのも戦闘時のにゃんサマの決め台詞だ。
黒尾くんはこちらを指差し腹を抱えて笑っている…そのまま永遠に笑い転げていろ。
にゃんサマの台詞を口にするなり周りがザワついたような気がしなくもないが気にしない、気にしたら負けだ心が折れる。