第1章 ~春~ 4月
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「師団長はですね。仕事ぶりは良いんですが、お父さんの様に私のプライベートに口出してくるんですよ」
「ほう?例えば??」
「もういい歳だからって、やたらと男性を薦めてくるし。この間なんか、休日は1日部屋で本を読んでたって話したら『外に出ろ』ってうるさいし……」
「うるさくて結構。お前は外にでて、男捕まえて、さっさと幸せになれ」
「結婚している師団長はさぞかし幸せなんでしょうね。マリーさんと喧嘩した翌日なんて、すごい顔してますもんね」
私の話にエルヴィン団長は心底楽しそう笑う。が、問題はその横だ。チラッとリヴァイを盗み見ると、彼は黙ったまま伏し目がちに卓上に並べられた料理を見つめていた。
彼から感じるのは、他人を寄せ付けないような。近寄りがたい雰囲気。
まぁ、私に対する第一声で察した。多分この人は、警戒心の強い人なんだろう。
だとしたら、見知らぬ女の話より……
「なんだか、私ばかり話している気がします。団長の話も聞かせて下さい」
「良いんだ。今日はエルの話が聞きたくて誘ったんだから」
「それはありがたいのですが、もうこれと言った話がありません」
「おや、ナイルの愚痴はそんなものかい?」
「あ、いや。それに関してはまだまだあるんですが……」
間髪入れず「おい!」とツッコミを入れてくるナイルはどうでも良い。とにかくリヴァイが気になって仕方がない。
「じゃあ、リヴァイ兵士長のお話聞きたいです!」
「……話すことなんてねぇよ」
バッサリと切り捨てられた私を、ナイルが鼻で笑った。
「残念、フラれちまったなぁエル」
「……少し黙っててもらえません?」
「俺は黙らねぇぞ!俺は喋る!」
そんな落ち着いた店内に似つかわしくないやり取りを、この後も延々と続ける事となった。