第1章 ~春~ 4月
「どういうことですか??」
訳が分からずナイルへ目を向けると、彼はエルヴィンを顎で指した。
「おや、彼女が来るとリヴァイには伝えていなかったか?」
予想通り。とでも言うように、ひょうひょうとしている団長。
このまま席に着く訳にもいかず、エルは机の横で彼らのやり取りを見つめていた。
さて、どうしたものか……
「おいエルヴィン、俺の部下が困ってんぞ。ちゃんと説明してやれ」
ようやくナイルが口を開いた。
「あぁ、すまなかったエル。兵士長というのは新しく作った役職でね。調査兵のトップを意味するんだ。リヴァイにも会議に出席してもらうから、ここへ寄ることも多くなる。だから君に紹介しておきたくてね」
『調査兵のトップ』という事は相当な手練れなのだろう。
エルヴィンの話を聞くと、まだ理解しきれてはいないが凄い人なんだろう。という事は想像がついた。
そして、これから顔を合わせるのなら粗相は出来ない。
「あの……初めまして。ご挨拶が遅れましたが、私はナイル師団長の補佐を務めておりますエル ウッズです。以後お見知りおきを」
そう言って右手を差し出すと、眉間にしわを寄せた男は私を見て動きを止めた。
……何か気に触ったのかな。
内心緊張したが宙に浮いたままの右手は、しばらくしてようやくその意味を成す。
「……リヴァイだ。よろしく頼む」
そう言って、リヴァイ兵士長は私の手を握った。