第4章 ~冬~ 12月
「おいエルヴィン、憲兵団に馴染みがいると言っていたな?」
エルは調査兵ではなく、憲兵だった事にしてくれと頼んだ。
俺が彼女にしてやれるのは、そんな事ぐらいだ。
「……掛け合ってみよう」
それから程なく、ナイルが飛んできた。
「お前は休暇中、馬車と……」
そんな説明を、病室の外で聞いていた。
理由が分かり「安心した」と話す声は明るくて。
虚しくて……
もう何度歩いたか分からぬ廊下を
独り、肩を落として歩いた
己が決めた、彼女の『過去』と『未来』
もう手の届かない、遠い存在となった彼女へ
退院前夜、別れを告げに行った。
眠るエルへ最後のキスをした。
……それから時は過ぎ
俺を見かねたエルヴィンの策略で、彼女に再会した。
知らなかったんだ。
足に後遺症が残った事も、ナイルの側近として働いている事も……
『初めまして』
少し緊張したように差し出された手を握った時。
本当は、そのまま引き寄せ抱きしめたかった。
『子供?好きですよ』
あの頃は「接し方が分からない」と、目で追っているだけだった。
共に過ごした時は、決して明かさなかった事実に胸が痛み……
俺は彼女を満たしてやれていたのか?と、少しばかり自信を失った。
『リヴァイ兵士長』
そう呼ばれる度。彼女は違う人生を歩んでいるのだと思い知らされた。
その姿も、澄んだ声もあの時のままで。
どうしようもなく苦しかった……