第4章 ~冬~ 12月
あの日の事は、鮮明に覚えている。
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――…
『重症だ!道を開けろ!』
重々しい門を通過してすぐ、怒号が響いた。
「……エル」
荷馬車に乗せられたまま、病院へ運ばれる彼女を……
俺はただ、隊列の中から見守る事しか出来なかった
暇さえあれば病室へ通った。
愛しい人は、なかなか目を覚まさない。
手を握り、眠る彼女へ声をかける。
この頃の俺は
自身の無力さに絶望していた。
そうして幾日が過ぎた頃
その重い瞼は、ようやく開かれた
「……ッ!エル!」
思わず声を荒げる。
エルの瞳に、光が差し込んだ。
久しぶりに見たその色に
安堵のため息を付いた時
ゆっくりと、彼女の視線が俺をとらえた。
「……だれ?」
何度も、
惜しみなく愛情を伝えてくれたその声で。
俺は暗闇に突き落された