第4章 ~冬~ 12月
「待ってよリヴァイッ!!」
エルが叫んだ名は、彼の元まで届いた。
動いていた足が、ピタリと止まる。
「リヴァイ……だと?」
ゆっくり、ゆっくりと彼がこちらを振り返る。
その瞳は見開かれていて……
私は石畳に座り込んだまま、彼に向かって想いを叫ぶ。
「ねぇ!内地で平和に暮らしてる私はもう、貴方を支える資格は無い!?」
順番なんて……もうぐちゃぐちゃ。
言いたい事が多すぎて、まとめるなんて不可能だ。
「全てを忘れ、のうのうと生きている私に何を思った!?」
当時彼にあげた本が8冊、全て返ってきた。彼なりに気持ちの折り合いをつけたのだと分かった。
「こんな女、愛想つかされて当然だけど……」
ボロボロと、涙が溢れてくる。
「今日、ここに来てくれたのなら……自惚れてもいいの?まだ愛されてるって……」
手に力を込めれば、手紙がぐしゃっと音を立てた。
「分かんないの、教えてよ……リヴァイ」
……これを読んだ時、当時の記憶が鮮明に蘇った。
あの頃感じていた絶望と
貴方という愛おしい存在
何故、こんなにも大切な事を忘れていたのか。
あふれ出る涙と共に「ごめんなさい」と、うわ言のように何度も繰り返す。
とんでもなく、みっともない女。
でも、こうするしかないのだ。
私は何一つとして……上手い言葉など、持ち合わせていないのだから。
一方。
リヴァイはろくに回らぬ頭をかかえ、泣きじゃくる彼女を見ている事しか出来なかった。
やがて……一つの結論に至る。
「思い出した……のか?」
そう口にするのが、やっとだった。