第4章 ~冬~ 12月
数日後
エルは自室で、ようやくエルヴィンから手渡された袋を開けた。
本当はすぐにでも中身を確認したかったのだが……
『みっともねぇ女になるなよ』
ナイルに言われたこの言葉。
自制するとは決めたものの、すぐに中身を出したらその『みっともねぇ女』になりそうだったから。
自分が冷静になるまで、部屋の隅に置いておいた。
「全部で……8冊か。こんなに良いのかな?」
本は高価だ。
1ページづつ手作業で刷られるし、製本だって職人技。
私が所有している本はこうして頂いた物がほとんど。どうしても欲しくて、お金を貯めて買った物は数冊。といった所だ。
本を取り出し、空いている棚に1冊づつ並べる。
「どれから読もう……」
人差し指で本の背表紙をなぞる。
ざっと見て、一番気になったのは推理小説。
「これにしようかな……ん?」
目的の本を取り出そうと縁に指をかけた時。その隣にあった本が目に飛び込んで来た。
明らかに恋愛小説だ。
「これ……リヴァイ兵士長の私物だよね?」
以前、彼は『恋愛小説は読まない』と話していた。
居心地悪そうなその本を、手に取る。
少し古びているが状態は良い。
一体何年前の本かな?
そんな疑問が浮かび、エルは何気なく裏表紙を開いた。