第3章 ~秋~ 10月
「んぁっ……っん……」
僅かに開いた隙間から、必死に空気を取り込む。
その際。吐息を漏らせば、苦しい程に抱きしめられた。
快感に溺れるその最中。
私はうわごとのように、彼の名を呼んだ。
「リヴァ……へぃ…ちょぅ」
その瞬間。
バッという空気音と共に、彼の身体が離れた。
腰に回されていた手は、私の両肩に置かれ。
腕の長さの分だけ、私達の距離を開ける。
「……兵士長?」
一体何事かと、私は間抜けな声を出す。
今分かるのは……
2人の間を抜ける風が『冷たい』という事と。
肩に置かれた彼の手が、僅かに『震えている』という事だ。
「……悪かった」
「……え?」
聞こえたのは謝罪の言葉。
彼は俯いたままで、その表情を知る事は出来ない。
「お前は……俺に踊らされただけだ」
肩に置かれた手に、グッと力が込められた。
「おそらく俺が先に、お前に好意を抱いた……すまなかった」
「どういう……事でしょうか?」
どこに謝る必要性がある?
……彼の意図が分からない。
「似てるんだ」
こんな悲痛な声、聞いた事がない。
「愛した女に。お前は似てるんだ」
……今、なんて言った?